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芒種/
熱こもるからだに夏の幸

明治国際医療大学教授

伊藤 和憲

梅の実と、きゅうりの涼と

気温は高いのに、じめじめとして汗をかきにくい芒種(ぼうしゅ)。
からだの水分代謝がうまくいかず、肌などのトラブルが気になる時期です。
また、汗をかかず毛穴が閉じているため、からだの熱が内にこもりがちに。そこから生じる不調が風邪や口内炎、さらに内部の肺や消化器にまで影響することが気になります。発汗と自律神経のはたらきは深くつながっているので、そのバランスがくずれることで、さまざまな不調や違和感が生じると考えられています。
大切なのは、規則正しい生活やリラックスによって、自律神経をしっかりと整えること。さらに鍛える方法としては、温水と冷水を交互に浴びる「交代浴」なども挙げられます。

そんな芒種に旬を迎える食材に、梅があります。
梅雨の訪れとともに、ふっくらと実りゆく梅の実。青く未熟なものは生では食べられませんが、木から落ちるほどに完熟した実の味わいは格別。とろりとして甘い果肉が、すももや桃のようだと好まれる方もおられるとか。
ちなみに、梅酒にするなら熟す手前の青い梅、梅干しや梅酢には熟した梅を。もっと完熟した梅が手に入れば、砂糖と一緒に煮ておいしい梅ジャムにもできるそうです。

さらにもうひとつおすすめしたいのが、からだの熱を取ってくれるキュウリ。
その名のとおりウリ科の植物で、からだを冷やし、利尿の助けになることが知られています。そうしたはたらきは、体内にこもりがちな熱を冷まし、たまりやすい水分を排出したい時期にはうってつけ。
食べるだけではなく、輪切りにした「きゅうりパック」を、ほてりや炎症が気になる肌のお手入れに使う方もおられます。

ぜひ旬の恵みを活用して、内からも外からも、夏に負けないからだを整えていきましょう。

いくつものお菓子に喜び「七嘉祥」

らっきょうも、お漬物として年中見かけるものの、じつはこの頃が旬の食材。ぴりっとした独特の辛みが、気や血のめぐりにはたらくとされています。気分が落ち込みがちなときやからだの冷えが気になるとき、あるいは夏風邪を引きそうなときなど、ちょっと食卓にらっきょうを添えてみてはいかがでしょう。

ちなみに芒種には、お菓子を食べて厄除招福を願う「嘉祥(かじょう)」という行事がおこなわれます。平安時代には、神前に16個ものお菓子や餅を供えたそうですが、のちの時代になると「1+6」で「七嘉祥」と呼ばれる7種の和菓子を用意するようになりました。

甘いもので疲れた夏のからだを癒やし、厄除招福を願うという、お菓子好きにはたまらないこの行事。せっかくなのでお気に入りの和菓子を揃えて、たまには思いきり心身を甘やかすのも良いのではないでしょうか。