Yojo Column
YOJO知恵袋

香り、煙りとともに、心地よく呼吸しながら、線香を焚いていただきたい
私はふだん、BRANCH INCENSE(ブランチ インセンス)として活動しています。
こちらは、影絵師の方に作っていただいたロゴです。女神がブランチ=枝を持っているすがたを描いていただきました。
土地と香りをテーマに活動していて、フィールドワークで採集した植物など、自然物だけでお香をつくっています。液体の香料、化学糊、防腐剤、精油などは一切使っていません。樹脂とか、薬草とか、自然物の粉だけをブレンドしていますので、それぞれの自然物が淡く香る特徴があります。自然物によって煙りの質、煙りのすがた、かたちが変わります。たとえば、とろみがある煙だったり、軽くてスッと立ちのぼる煙りだったりします。香り、煙りとともに、心地よく呼吸しながら線香を焚いていただきたいと思っています。
嗅覚は個人的な記憶と結びついている個人的な感覚なんです
皆さんに嗅いでいただきたい香りがあります。なんだと思いますか?
今、1人ずつ、香りを嗅いでしていただきました。じつは「ラベンダー」なんですが、酸っぱいと言う方、甘いと言う方、眠くなると言う方、目覚めると言う方。同じ香りでも人によって感じること、そこから想起することがちがいますね。嗅覚は個人的な記憶と結びついている個人的な感覚なんです。
私が、香りをつくるようになったきっかけについてお話しします。
ボタニカルスキンケア・ブランドで働いていたとき、自分に合う、合わないよりも、人気があるからという理由で商品をお選びになるお客様が多くいらっしゃいました。でも、香りに対しては皆さんとても素直で、自分をごまかせないんです。誰も、嫌いな匂いに対して「いい匂い」とは決して言えない。嗅覚は個人的で、素直な感覚、ということを教えられました。「嗅覚って面白いな」と思ったことがきっかけで、嗅覚芸術を学び、香水の調香を始め、その後、お香づくりへと移行しました。
香水は人につけるものですが、お香は土地に対して、自然に対する捧げものとして焚いてきた歴史、土地への感謝、土地を思う気持ちをお香にしてきたという歴史があります。そこからお香に惹かれ、お香に惹かれる感覚は私にとってごく自然なことでした。
私は、東日本大震災のとき宮城県に住んでいて、地震が起きた日の夜、電気がなく真っ暗だったんですけど、隙間がないんじゃないかっていうくらい、夜空が星で埋め尽くされている光景を生まれて初めて見ました。そのとき初めて、地球で生きていることを実感したんです。そのときまで、地球で生きていることを実感していなかった。
地球で生きている自分を実感したときから、いろいろなことが日頃から起きるけれど、すべてはその土地を思うこと、その土地を大事にすることとつながっているのではないか、と考えるようになりました。そこから、土地をテーマにして活動し、フィールドワークをしています。
私にとっての養生は、香りをつくること
私にとっての養生は、香りをつくることだなというふうに思っていまして、自然であったり、季節だったりをインプットして、お香としてアウトプットする作業の過程に、エネルギーがめぐり、流れというものを感じています。
YOJO/OKYU 清明・穀雨の香りは、小豆島で採集した植物が入っています。この写真は小豆島でフィールドワークをしている様子です。小豆島で出会ったおじさんと物々交換していただいたイチジクの葉っぱを乾燥させている写真です。あらかじめ採集するものを決めて出かけるのではなく、出かけた先で、その土地を象徴する植物との出会いがあって採集させていただくことが多いです。
線香がどうやってできているのか説明します。これは薬研(やげん)と言いまして、採集した自然物を乾かして粉砕するために使います。薬草や樹脂だけでなく、石や土なども使います。石や土は、香りとして感じるわけではないのですが、その自然物が燃えているという現象を大事にしたいと思って使っています。石や土を通じて、その土地を想像することが大事だと思っています。
香りを調香して練ります。タブの木という粘性のある木の皮を混ぜて粘り気を出し、団子状にします。こんな感じで、手で練っています。その後、線香状に絞り出して乾かします。
私は、お香は捧げ物だと思ってつくっています。お香を焚く時間は、土地のことを思ったり、自然のことを思ったり、ご先祖様とか、自分以外のものを思うひと時、季節を通じた自然とのコミュニケーションとも思っていて、YOJO/OKYUのコンセプトとリンクしていると感じ、このプロジェクトに参加しています。
1年24節気、12の香りをつくります。2節気ずつ、その節気の自然の風合い、雰囲気を思い起こし、フィールドワークで採集した自然物、香料から、その節気に合った素材を選び、香りをつくっています。これからも、未知の香りとの出会いにワクワクしながら、YOJO/OKYUの香りをつくっていきます。
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