Yojo Column

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夏至
/迫りくる暑さに食で克つ

明治国際医療大学教授

伊藤 和憲

アユと枝豆の爽やかな滋味

 夏至とは、本格的な夏の始まりにあたるとき。暑さも盛りになっていきます。そのスタートにあたる初候には、アユや夏みかんが旬を迎え、野山にゆけば、うつぼ草といった薬草が。
 季節がすすむ次候では、カンパチ、みょうがも旬となり、美しい紫色の花を咲かせるあやめが見頃に。このあやめは、本格的な梅雨の到来を告げる花としても知られています。
 終わりとなる末候は、ハモやおくらが旬を迎え、半夏(からすびしゃく)が生えはじめる「半夏生」にあたる時期です。この頃までに田植えを終わらせた方が良い、と昔から言われているため、農作業のなかでもひときわ大変な田植えの労をねぎらい、疲れを癒やす意味で、香川ではうどん、関西ではタコを半夏生に食べる風習があります。

 さて、夏至に旬となる食材のなかでも、ぜひ口にしておきたいのがアユと枝豆です。
 6月に釣りが解禁されるアユは、夏の清流に輝く女王。住む川によって味が違うとされており、キュウリに似た独特の香りから「香魚」と呼ばれることも。柔らかい骨ごと食べられるので、カルシウムやリンを摂るのに適しています。
 一方の枝豆は、おつまみの定番としておなじみですが、日本だけで400品種を超えるという意外な一面も。たんぱく質、ビタミン、イソフラボンといった成分がバランスよく含まれており、いよいよ暑さがからだにこたえてくる夏の、栄養補給にぴったりです。

氷をかたどった水無月で厄払い

 ちなみに、おぜんざいなど冬のイメージが強い「あずき」も、この時期のおすすめです。
 ストレスを和らげ、水分のめぐりや利尿にはたらく成分が、こころとからだを整える助けに。また、散血と呼ばれる血のとどこおり対策や、解毒や抗酸化といったデトックス食材としても期待されています。

 そんな「あずき」菓子とともに摂りたいのが、夏至の水分補給に適したお茶。種類によって成分もさまざまなので、脂肪の分解にはウーロン茶、デトックスには日本茶といったように、目的にあわせて選ぶとよいでしょう。

 また、この季節を代表する味覚の「水無月」も、ういろうや葛の生地に「あずき」をのせた和菓子です。とくに京都では、「夏越の祓(はらえ)」の行事に欠かせない甘味。諸説ありますが、特徴的な三角形は氷片を表しており、上にのった「あずき」には厄払いの意味があるとされています。