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衣に込められた日本の伝統
草木や花々、鳥、虫、動物、そして人までが、日の光を浴びて輝く時期。それが小満です。
はじまりにあたる初候は、蚕のエサになる桑の葉を摘むことから、別名「木の葉採り月」。旬のそらまめやキス、てんとう虫などの姿を見かけます。田園地方では、水を張った棚田の上にぽっかりと月が浮かび、水面に月影が映し出される幻想的な光景が。「田毎の月」という名称で愛でられています。
つづく次候は、五月雨(梅雨)の合間にみられる「五月晴れ」がうれしく、紅花が咲き、クルマエビや「しそ」が旬となる頃。潮干狩りも楽しめます。終わりにあたる末候には、四十雀(シジュウカラ)の鳴き声が聞こえはじめ、ビワやベラが旬に。麦畑も黄金色に染まり、いよいよ刈り取りの時期がやってきます。
暑さも日に日に増してくる、この小満の行事といえば「衣替え」です。
衣替えとは、もともと中国から伝わってきた習わし。江戸時代には気候に合わせて、年に4回の衣替えが定められていました。やがて明治以降になると6月と10月の年2回に。冷暖房が普及したいまでは昔ほど重視されていないものの、学生たちの制服や社会人のクールビズ姿を見かけることで、季節の変化に気づけます。
ちなみに、昔の「衣」とは着物のこと。時期によって着分け方があり、6月と9月は単衣(裏地がないもの)、7月と8月は薄物、10月~5月は裏地のある袷。それぞれに素材や重ね方が違うため、肌で季節を感じられるのが魅力です。
着物の良さが見直されつつある昨今、気候や過ごす場所によって単衣と袷を使い分けるなど、昔の習わしを取り入れながら、伝統的な「衣」文化を楽しんでみてはいかがでしょう。
くすのきの力で衣類を大切に
さて、衣替えで気をつけたいのが、衣類の保管方法です。湿気がこもりやすいと、カビの発生原因に。
戸棚や袋にぎゅうぎゅう詰めにするのは避け、なるべく風通しの良いところに保管しましょう。除湿剤を置くのもおすすめです。また、昔から防虫・消臭効果が高いことで重宝されてきたのが「くすのき」。くすのきを衣類とともにしまったり、くすのき油をしみこませることで、衣類を長く、大切に着るという習慣がありました。
くすのきは天然素材なので、身体にも洋服にもやさしくて安心。ぜひ、昔の人々の知恵を生かして、衣服を大切にしてください。
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