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菊を愛でる重陽の節句
白露という節気は、大気が冷えてきて露を結ぶ様子から名づけられました。少しずつ残暑がおさまるとともに、本格的な秋の始まりへ。見上げる空のあちらこちらに、秋を告げる赤とんぼが行きかうなど、いたるところに秋の気配を感じられます。
この白露を代表する行事が、五節句のひとつである「重陽の節句」です。重陽とは、奇数の「9」が重なる9月9日のこと。「菊の節句」とも呼ばれており、菊の花を飾って邪気を払い、菊酒を飲んで長寿を願う日として、古くから大切にされてきました。いまでも各地で、「菊の花に綿をかぶせて露を含ませ、その綿でからだを拭くと若さを保てる」という言い伝えにちなんだ「被せ綿」や、桃の節句で飾ったひな人形を再び飾って長寿を祝う儀式などがとりおこなわれます。
ちなみに本来の9月9日は旧暦なので、ちょうど菊も盛りですが、いまの暦だと見頃になるのはまだすこし先。菊人形展など、菊を主役としたイベントは10月〜11月ごろに催されることが一般的です。とはいえ、せっかくの「陽」が「重なる」おめでたい日。お部屋のどこかに菊や菊をモチーフにした飾りをあしらい、敬老の日に先んじて長寿や健康を祝うのもよさそうです。
飾りにも薬にもなる秋の七草
そしてもうひとつ、白露のくらしを彩るのが、萩、葛、藤袴、桔梗、なでしこ、おみなえし、すすきといった「秋の七草」です。秋の野山に趣をそえるこれらの七草は、食べて無病息災を願う「春の七草」とは違い、その美しさを鑑賞するためのものとされています。
ただ、ひとつひとつに昔から知られる薬効があり、葛根湯でおなじみ風邪薬のもとになる葛の根をはじめ、萩の根は咳止めや胃痛、下痢止め、藤袴は糖尿、桔梗の根は咳止めやのどの痛み、なでしこにはむくみや高血圧、おみなえしの根は消炎、すすきの根や茎は利尿など、まさに野山に置かれた家庭の薬箱。昔の人々にとっては秋の七草も、ただ眺めて楽しむだけのものではなく、これから迎える冬の病いに備えて集めておくべき薬草だったとうかがえます。
菊にしても、七草にしても、美しいだけではなく、健康長寿への深い想いから愛されてきた秋の草花。現代の私たちも健やかな日々を願って、その清々しい風情をくらしのなかで楽しんでみませんか。
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